好きなもの雑記

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シン・エヴァンゲリオンを観た感想(ネタバレ注意)

 シン・エヴァンゲリオンを観た。実はファンでもなんでもなく、本当のところファーストガンダムが一番好きなので、恋人がエヴァファンでなかったら地上波初登場まで観なかったであろう。

 まず、一年位前に観てみろよ!と猛プッシュされて26話を一日で一気に観た。

とても面白かったからこそ、一日中観ることができたと思う。ただ、聖書の知識があまりないため、時折「????」となることがあった。そのあたりは恋人に聞いてなんとか解決できた。

そのくらいしか分かっておらず、観ておらず、こんな奴がシン・エヴァを観に行くのはファンにも監督にも失礼では?と思った。

 

 そして数日前に観に行った。

恋人が取った回は席が揺れたりするタイプで、序盤は酔ったり急な風にビビったりと映画どころではなくなりかけたが、なんとか慣れてちゃんと観てきた。

 感想は、とても面白かった(単純)。ミサトさんが命を逃す方舟を命を守る方舟に変え、リツコさんがゲンドウを撃ち、サクラが泣きながらシンジくんを止めたりするのを観るにつけ、共感ばかりであった。

 ミサトさんが加持さんと一緒に行かなかったのは加持くんがいたからで、さらに攻撃に出たのも彼が生きていたからだと思う。

アニメ版ではミサトさんが初号機の暴走に驚いていたが、今作のミサトさんなら理解できるんじゃないかなと思った。

あのラストのミサトさんは、例え加持さんが生きていて自分が行くと言っても絶対に譲らなかったし、息子の元に戻れと言うと思う。

 ユイさんがシンジくんが取るつもりであったケジメを引き受けたのもこれだと思う。

私が思うに(完全に想像だが)、ユイさんはゲンドウの妻であったけれど、母親役もやっていたのかなと思う。

シンジくんの母として彼を新しい世界へと送って、ゲンドウの妻(母的な意味合い含む)としてゲンドウの責任を半分持った。

 

 ゲンドウは、最後の最後で息子に謝ることができた。彼もそこでようやく大人になれたと思う。

シンジくんに自分の過去を話して、自分も君と同じ理由で怖かったのだと話す姿は、ようやく父としての役目を認識したのだと思った。

遺された息子に怖くて向き合えないが、心の奥底では抱きしめてやりたかったんじゃなかったんだろうか。その一方で、ユイからの愛を産まれた時から無条件で受けるシンジくんは敵でもあったんだろう。

自分だって最初からああやって愛を受け取りたかった、なんで息子は生まれた時から…と、ゲンドウが歳を食った子供であるからこその愛憎入り混じる感情が彼をここまでさせたのかなと思う。

 

 自分が恋愛をしてきた感覚として(私は女性なので対象は男性に偏るが)、性格がどうにもできないところでねじ曲がっていたり、自分ではどうにもならない部分で辛い経験をしてきた男性は、ゲンドウのような思考が微妙にあったりする。

そういう人は、付き合う女性に母を見出そうとしがちでもある。母親との触れ合いが薄かったり、無条件に人から受け入れてほしかったり、自分が自分であるということをただ愛してほしい人や、孤独で一人の人ばかりだった。

 だから、ゲンドウを案外可愛い人だと言うユイの気持ちも分かる。冬月教授が、そうは思えないのは同性の年上でまともに父性があったからだと思う。

 

 最後に、ゲンドウという圧倒的に近寄りがたい父からすまなかったと謝られたシンジくんについてだ。

子供にとって、まだ子供の時に親から「あの時はごめん」と謝られることほどどうしようもなくて虚しい気分になることはない。親はそれでややスッキリするが、子供側はさらにモヤモヤを抱えたりする。

ゲンドウが謝るのがあの時点でよかったと本当に思う。シンジくんが成長する前に謝ると、それはそれで彼の中で暗黒が始まってしまう。

 親の謝罪を受け入れられるのは、子供が大人になってからだ。親も自分と同じ悩む人間と心から納得していないと、「なんで今謝るんだ!じゃあやらなきゃよかっただろ!いつも自分勝手に振り回して、もう嫌だ!」と拒否反応しか出ないと思う。

 あの謝罪で初めて二人は親子としての人間関係ができたのだと思う。あの時にゲンドウはシンジくんを息子として愛していたし、シンジくんもゲンドウをまともにお父さんと呼べたんじゃないだろうか。

成長したシンジくんは、このことで過去を振り切って真っ直ぐ生きていけると思う。思春期に抱えた壮絶な疑いが晴れて、自分は父と母から望まれて産まれ、愛されていた確信が持てたからだ。自分の子供を愛していなかったら、ゲンドウは産まれてくる子に名前を2通りも用意していないはずだ。

 とにかく、全員が救われてよかったと思う。このままみんな幸せに生きていってほしいと願ってしまう。

 アスカも彼女らしい居場所を見つけて安心した。ケンスケくらい器のデカイ男でなければ、アスカは手に負えない。

個人的にはシンジ×アスカという組み合わせよりもかなりしっくりきた。

シンジくんへの想いを振り切って、ケンスケといることを選んだアスカは強くて賢いと思う。

そしてケンスケは、一生アスカの頭を撫で続けて幸せに暮らしてほしい。

 

 ということを踏まえて、恋人に質問をした。

「あなたとあたしが結婚して子供が1人いるとする。あたしか子供かどちらか1人だけ生かす方を選ばなきゃいけなくなったらどちらを選ぶ?」

私は、恋人は私を選ぶだろうと予想していた。理由は、彼にとってその子供は唯一無二の存在でもなく、命を賭けた存在でもないからだ。

「うーん、あなただね」

予想通りの答えで思わずやっぱり!と笑ってしまった。その理由も予想通りであった。

「あなたはその状況でどうするの?」と質問された。

そんなのは決まっている。3人の中で1人が死ぬことは変わらないのだから、自分が死んで夫と子供を生かす。

命をかけて産んだ子と、その子を欲しいと思わせた男とどちらか選ばなければならないなら、自分が死んだ方がマシである。

それと、これは彼には言わなかったしただの逃げかつ無責任でしかないが、どちらかがいない世界で生きることに私は絶対に耐えられない。だったら私以外の2人で生き残ってほしい。

 

 とにかく、いろんなことを考えられる良い映画だったなと思う。

座席が揺れないバージョンでもう一度観たい。